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著作権侵害、そしてライターの仕事の真実

徳力さんの書いた記事に対する、とんでもないツッコミを読み、素人ライター跋扈の時代の、著作権に関する間違った認識の根深さに愕然としました。

■表現書き換えは著作権侵害

その突っ込みは、徳力さんが書いた記事の以下の部分にツッコミを入れていました。

……………………………………

しかも、わざわざご丁寧にマニュアルで、参考サイトを明示した上で、文章をコピペでは無く「リライト」することでコピペであることを分からなくするノウハウを教えてるわけですよね。

「参考サイトの文章を、事実や必要な情報を残して独自表現で書き換えるコツ」や「参考サイトに類似しない本文作成のコツ」とか、参考サイトを元にコピペをしたとばれない記事の書き方を、ライターとしての小遣い稼ぎをしたい人たちに教え込んでるわけですよね?

これ今のDeNAの方々がどう思っているか知りませんが、どうみてもこれ明らかに悪質な組織犯罪に見えますよ。

…………………………………………

引用元:Yahoo!ニュース

http://bylines.news.yahoo.co.jp/tokurikimotohiko/20161203-00065085/

その突っ込みは、表現を書き換えれば新たな著作物になることを、徳力さんはわかっていないと批判していました。

とんでもない勘違いをしています。表現だけが著作物ではありません。話の展開の仕方、ひとつの事実に対する考察も著作物です。

そもそも表現だけ書き換える行為は、著作権法における「同一性保持権」を侵しています。単なるコピペ「無断転載」以上に、著作権侵害行為です。

■引用と著作権侵害のちがい

その突っ込みは、表現を書き換えれば新たな著作物になることが認められなければ、文献に対する批評が成り立たないとも語っていました。

引用と著作権侵害の区別ができていません。

引用の要件を満たせば、著者に許可を得ずに引用することはできます。しかし、パクリは、引用の重要な要件である

●引用部分とそれ以外の部分の「主従関係」が明確であること、

●報道、批評、研究などのための「正当な範囲内」であること

を満たしていません。

引用に関しては
文化庁「著作権なるほど質問箱」用語説明「引用」

■文献を参考にしつつ、独自の著作物を作る方法

引用ではなく、文献を参考にしつつ、新たな著作物を作るにはどうすればいいのでしょうか?

一次情報、すなわち自分が直接見聞きしたことから書けば、まちがいありませんが、それができない場合もあります。その場合には、参考文献を自分の中で消化したうえで、新たに自分なりの考察に基づいて書かなければなりません。

わたしも一次情報だけでは書けず、既存の書籍などを参考にする場合はしばしばあります。その際に、どのようにして新たな著作物を作っていくのか、来月発売される医師監修の健康関連書籍を書くにあたってどうしたかを例に、説明します。

■複数を参照

フィクションや随筆は別ですが、ノンフィクションや実用文を書く場合に、1つや2つの文献を元に、独自の著作物にするのは無理です。参考文献の量が、書く原稿量より少ないと、参考文献以上のものは書けません。パクリになります。

書籍等を参考に書籍を書く場合には、1冊書くのに、わたしは最低でも30冊の本を読みます。今回の健康関連書籍を書くにあたっては、10冊余りの書籍と、100本以上の医学論文を読みました。

■事実かどうかの裏付け

ノンフィクションや実用書を書く場合には、そもそも参考文献に書かれていた内容が事実であるかどうか、裏付け作業を行うことがとても重要です。

いまはネットで簡単に「情報」が手に入りますが、それが本当に事実であるかどうか、保証はありません。

新聞社のニュースにもしばしばまちがいがあります。

企業などのニュースリリースを元にしたニュースにありがちです。他社がとっくの昔に行っていることを、目先をほんの少し変えて「業界初」として発表したニュースリリースを元に、その業界に詳しくない記者がニュースを書くと、しばしば、その微妙な差の部分を削除して書いてしまいます。
たとえば「△△」開始は業界で遅いほうなのに、「○○な△△は業界初」というプレスリリースから、「○○な」を略して、「業界初の△△を開始!」と書くと、完全な誤報になります。

わたしの専門分野のひとつ、IT系のニュースでしばしば発見します。

複数の新聞に書かれているから「事実」などとは言えません。元はあるニュースリリースという、1つのソースかもしれませんから。

たとえばわたしの場合なら、1つの研究に基づいて書かれた複数の論文を読んでも、ソースは1つですから、できるだけ同種の複数の研究について調べます。複数の研究で同様の結果が出ていれば、それは事実に近まります。

■信頼性の確保

今回、医療関連が問題になったわけであり、自分も医療関連の書籍執筆を例にとっているので、医学における「事実」について、少し説明しておきたいと思います。

医学は日進月歩です。従って、5年前の「事実」は、現在では「事実」ではなくなっていることがあります。

医療関連の記事を書くにあたり「医師に監修してもらえば大丈夫」と考えている人や会社をしばしば見かけます。しかし、医師なら誰でもいいわけではありません。

わたしの仕事で一番多いのは、専門医に取材して、他科の医師やかかりつけ医向けに記事を書く仕事です。医師であっても、専門医以外は特定分野に関しては最新の知見を持っていない、つまり古い「事実」しか知らないことが多いからです。

また医学論文がすべて「正しい」とも言えません。

わたしは参考にする研究を選ぶにあたり、信頼性をチェックします。

最初のチェックポイントは試験デザインです。たとえばある薬の効果を調べるときに、既存の薬と比較する場合もあれば、プラシーボと呼ばれる偽薬と比較する場合もあります。患者にどちらを飲ませるかを知らせると、知っていることで結果に差が出てしまうため、患者には知らせないものの主治医は知っている場合、主治医にも知らせない場合…など、いろいろなスタイルがあります。
こういった試験デザインを読み、その研究の信頼性を確かめます。

■コピーライターとライター

わたしの本業はコピーライターで、元々は新聞や雑誌の純広告のコピーを書いていました。現在は企業サイトのコンテンツを書くことが増えています。

ライターとしては書籍が三十冊あまりと、過去にIT系雑誌などで書いています。

そのため、ライターの方から「コピーライターとライターは何がちがうの?」としばしば聞かれます。

クライアント企業に右を向けと言われたら右を向き、左を向けと言われたら左を向くのがコピーライター……という誤解がよくあります。

しかし、仕事範囲には法的なチェックなども含まれていて、クライアントが

「こういう表現を入れて」

と言っても

「その表現は薬機法に違反します」

と止めるのも仕事です。薬機法に違反しない、なおかつ、見込み客に最大限に効果を伝えるコピーを考えます。

コピーライターはマーケティング提案を含めた仕事をしています。クライアント企業にとっての最終的なハッピーを目指して仕事します。

たとえばクライアント企業が40歳以上向けの化粧品に関して

「多く売れるように、20歳代もターゲットになるコピーを書いて」

と言ったときに

「開発部のコメントに<20歳代には重すぎるクリーム>とありましたよ。無理に広げて、購入した20歳代の顧客に悪い口コミを書かれたら、一時は多く売れても、商品の寿命が短くなります。きちんと適した顧客向けに広告することが、御社にとっても、顧客にとっても幸せなことではありませんか?」

と反対するのも仕事です。

■ライターの仕事とその価値

今回話題になったような「ライター」の仕事は「1文字○円」の仕事です。

たぶん、わたしは1文字換算をしたら、そのライターたちとは桁違いの金額をいただいています。しかし、同じ「ライター」であっても、その仕事範囲は大きく異なります。

わたしは企画、取材、調査、事実の裏付け……その他、多くを含めた仕事を「ライター」としてやっています。そして、たとえば試験デザインをちらっと見ただけで信頼性の有無を判断できるのは、積み重ねてきた勉強と経験があるからです。

そもそも、わたしは「1文字いくら」の仕事をすることはありません。「1文字いくら」の仕事は、「文章が長いとSEOで有利」などから生まれた、質を無視した文字を埋めるだけの仕事だからです。

そもそも、何を書くべきかから考える仕事では、あくまで「1本いくら、文字数は…」と文字数は後からついてくる仕事です。

■フィーを高く保つことの重要性

ライターの仕事、コピーライターの仕事は、きちんとやれば、かなり大変な仕事です。

わたしも毎回すべてを行っているわけではありません。たとえば医療専門広告代理店から資料を渡されたときには、彼らが資料の信頼性などは調べているはずなので、わたしはやりません。

そしてフィーが低い仕事はしばしば時間も少ないため、いささか手抜きになりがちです。

だから、わたしは大の苦手なお金の交渉をがんばって行ってきました。

自分が妥協すれば後輩は妥協せざるを得なくなり、その結果、業界価格が下がります。地味な裏付け作業をする時間が失われます。

安い仕事はお断りしています。受けてしまったら、業界全体の足を引っ張るからです。

ライターの仕事というのを、アウトプットの文字数だけで見ないでほしいと切に願っています。

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